日本人の平均睡眠時間は6.6時間ですが、ご自分の睡眠時間と比べていかがですか?
体質や生活環境などによる個人差はありますが、睡眠時間は若い人ほど長く、高齢者ほど短くなります。これは身体や脳の成長の伸び代が大きい若年層ほどより多くの睡眠が必要だからです。寝る子は育つとは良く言ったものですね。
睡眠時間は人それぞれで日中の眠気で困らなければ充分です。○○時間睡眠にこだわりが強いとかえってストレスを作ってしまいます。人は体や脳が要求する以上の睡眠をとる事は出来ませんし、加齢とともに睡眠時間は減ってくるものと考えましょう。
そうは言っても自分は何時に寝て何時に起きれば良いのか分からないとおっしゃる方もいるかと思います。
「睡眠障害の対応と治療のガイドライン」によれば、
眠たくなってから床に就き、同じ時刻に起床する生活が推奨されています。自然に寝付くことが出来る時刻は日中の活動量や季節により変化します。習慣的就寝時間の2〜4時間前は、一日の中で最も寝付きにくい事が解っており、早起きや不眠の解消のために意識的にいつもより早く寝ようと試みても入眠することは難しいです。
○○時には絶対に就寝しなきゃと意気込み過ぎると、かえって緊張して逆効果になります。寝れないときは眠たくなるまで待ちましょう。
一方の
起床時間は同じ時刻に毎日起床することが大切です。ここで大切なのは毎日同じ時間と言う部分です。日曜日の朝に遅くまで床で過ごしていたため、月曜の朝がつらくなってしまった経験があるかと思います。日曜や休日の朝でもなるべく同じ時間に起床し、できれば午前の早いうちに太陽光を浴びて体内時計をリセットする習慣をつけることが推奨されています。
体内時計とは人間の体のサイクルの事で、一般に25時間程度と実際の一日よりも1時間程度長い事が解っています。つまり一日を過ごすことに私たちの体は1時間ずつ遅れてしまい、夜更かししやすいが早起きしにくい仕組みになっています。西に行くより東に行く方が時差ボケがつらくなるのもこの体内時計の仕組みによると言われています。
ところが普段から規則正しく生活できるのは、
体内時計のズレは強い光によって補正することが出来るからです。強い光とは一般に太陽光の事で、起床後に目で光を感じてから15〜16時間後に眠気が生じることが解っています。ゆっくり過ごしたい休日であっても、一度同じ時間に起床し10分程度の日光浴や散歩などをし、睡眠不足を感じるようなら午睡で補うのが良いでしょう。体内時計は強い光でリセットされます。夜間に照度の高い場所(コンビニやスタジアムの様な)に長居したり、照度の高い画面(パソコンや携帯電話、テレビなどの画面)を長く見ることは体内時計や睡眠に影響が及ぶと言われています。気を付けたいポイントです。
睡眠不足を午睡で補う場合も
15時前までの20〜30分程度に抑えることが推奨されています。長い昼寝、夕方以降の昼寝は夜の入眠に悪影響があります。特に気を付けたいのが夕飯後の居眠りで、入眠障害を起こしている方をよく見かけます。中々寝付けなかったり、就寝時間が後退してしまう方は午睡のとり方を工夫してみると良いです。企業や学校では昼寝を推奨しているところもあるそうです。
パワーナップ(強力なうたた寝)とよばれ、昼下がりにくる強力な睡魔を昼食後の20分程度の仮眠でクリアにしようとする試みです。午後のモヤモヤがスッキリしますのでお勧めできます。
リラックス効果をもたらす嗜好品についても、意外な盲点があります。茶やコーヒー、チョコレートなどに含まれる
カフェインは5時間程度の覚醒作用が続きますので、摂取の量や時間に注意が必要です。タバコに含まれるニコチンは交感神経を活発にし睡眠を障害します。効果は吸入直後から数時間持続するため睡眠前の一服は避けるほうが良いでしょう。
アルコールも長い間人をひきつけてやまない嗜好品ですね。酒は百薬の長と言いますが、付き合い方を間違えれば百毒の長になります。特に睡眠薬代わりになってしまっている方は要注意。寝酒は寝つきを良くする一方で、夜間後半の睡眠が浅くなり中途覚醒を増やすため、睡眠の大幅な質的悪化を招きます。連用すると容易に耐性が生じるため、通常の飲酒と比べて摂取量が急速に増加しやすく精神的・身体的問題を起こしやすくなります。就寝時の3時間以上前には飲酒を終えておくようにするとよいでしょう。寝酒は不眠のもとです。常習的にならないよう上手く付き合っていきましょう。
最近よく耳にするようになった睡眠時無呼吸症候群も睡眠障害の原因となっています。睡眠中に断続的な呼吸停止が起きるために睡眠が障害されてしまう病気です。イビキをかきやすい方や下あごの小さい方(女性に多い)に良くみられます。睡眠中に足がムズムズするレストレスレッグス症候群(ムズムズ足症候群)も入眠困難を伴い睡眠の質を低下させます。鉄不足との関連が考えれれており女性に多いのも特徴です。上記の二つは2次的な病気が睡眠に悪影響を及ぼしている代表例ですが、場合によっては専門の治療を仰ぐこともよいでしょう。
厚労省が発表している睡眠障害対処12の指針では、眠りが浅い時はむしろ積極的に遅寝・早起きにするよう勧めています。眠れるまで寝ないというある意味開き直りの心構えがかえって睡眠に対する不安を取り除いてくれるのかもしれませんね。
ここまで書くと睡眠衛生の向上のためには戒律的な生活を送らなければならないと感じてしまいますね。24時間社会で生活する私たちにとっては、このような生活は物理的に不可能な場合もあるかと思います。享楽的生活は時に精神活動を豊かにしますし、多様なライフスタイルの中にこそ人間らしさを感じるものですね。病気の方を見ていますとやはり飲食と睡眠の乱れが根本にあるように思います。人は何を食べるかには十分な注意を払いますが、どのように寝るかは睡眠障害になるまであまり考えないものです。ちょっと体が変だぞ?と感じた時、ご自身の睡眠について見直すきっかけになればいいですね。
睡眠障害を東洋医学で治したいかたはこちらのページも参考になります>>>
参考
睡眠障害対処12の指針
(厚労省睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班)
- 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ充分。
- 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法を。
- 眠たくなってから床に就く、就寝時刻にこだわり過ぎないように。
- 同じ時刻に毎日起床しましょう。
- 光の利用で良い睡眠を。
- 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣を。
- 昼寝をするなら15時前の20〜30分まで。
- 眠りが浅い時はむしろ積極的に遅寝・早起きに。
- 睡眠中のイビキ・呼吸停止や足のピクつき・ムズムズ感は専門治療が必要。
- 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に。
- 睡眠薬代わりに寝酒は不眠のもと。
- 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全。