【イボ痔(痔核)】
痔の中で一番多いタイプがイボ痔(痔核)といわれるタイプで、相談の約半数はこのタイプの痔です。お尻の出口に近い部分にできる外痔核と、お尻の奥にできる内痔核の2種類があります。どちらのタイプもお尻のクッション材のような役目をする静脈叢(じょうみゃくそう)と呼ばれる毛細血管に出来たうっ血がイボ痔の正体です。できる場所によって2つのタイプがあります。肛門を時計に見立てて、お腹側を12時と、背中側を6時とすると、3時、7時、11時の位置に血管が走っているため痔が出来やすくなります。
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外痔核
肛門より少し内側に入ったところに歯状線といわれる肛門と直腸の境目となるラインがありますが、外痔核はこれより外側(お尻の出口側)に出来る痔核を言います。排便時に脱出しやすく、付近を知覚神経が通るため痛みを訴えることが多いです。また、排便時にいきんだ拍子に突然血豆のような黒ずんだイボが肛門周辺に現れた場合は、血栓性外痔核という病気もあります。
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内痔核
肛門より少し入ったところにある歯状線より内側(直腸側)に出来る痔核を内痔核と言います。この部分は知覚神経がないため、通常は痛みを感じることはありません。排便時に脱出や出血をともない、脱出した痔核がうっ血を起こすと痛みを感じるようになります。
内痔核は悪化の程度によって4つに分類されます。
- T度
痔核が肛門内で膨らんでいるだけで、自覚症状は無いが、排便時に出血がみられるレベル。
- U度
排便時に痔核が脱出するが、排便後は自然に中に戻る。出血や残便感がある。
- V度
排便時に痔核が脱出し、排便後は指で押し戻さないと戻らない。お腹に力を入れただけで脱出してしまう。
- W度
排便に関係がなく痔核は脱出しており、指で押し戻しても戻らない。粘液や便が染み出てしまい下着が汚れる。この状態をカントン痔核と呼びます。
【裂肛(切れ痔)】
俗に切れ痔と言われるのが裂肛です。肛門の皮膚が裂けたり切れたりすることで起こる外傷です。一般に痛みが強く、排便後も痛みが残る場合があります。
原因として、固くて太い排便があった際に肛門を傷つけたり、慢性の下痢による肛門の炎症が原因となる場合がほとんどです。慢性化すると排便のたびに裂肛の傷が深くなり、患部が潰瘍化したり、肛門ポリープや見張りイボが出来る場合があります。
【痔ろう(穴痔)】
直腸と肛門の境目にある歯状線には、肛門小窩(こうもんしょうか)という小さなくぼみが10数個あります。このくぼみの中に、通常は入ることのない便が、下痢などの水様便が原因で入ってしまい、細菌感染を起こしてしまうことがあります。その結果、肛門の周りに炎症が起き膿がたまります。これが痔ろうの前段階である肛門周囲膿瘍という状態です。
この状態が続いたまま放置すると、たまった膿が出口を探してトンネルを作ってしまい、やがてはお尻を貫通してしまいます。膿が出ることで腫れや強い痛み、38,9度ほど高熱などの症状は良くなりますが、トンネルは残っているため繰り返し細菌感染を起こし痔ろうを形成してしまいます。また、まれに赤ちゃんに出来る痔ろうがあります。生後1から3か月くらいの男児に出来、乳幼児痔ろうと呼ばれています。
【肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)】
読んで字のごとく、肛門掻痒症とは肛門辺りが痒くなる症状のことを指します。お尻の周辺は常に不衛生な状態なため、かぶれを起こしたことによるケースが多いのですが、ステロイドクリームなどの塗り薬を漫然と使用しているために過敏症になっている場合もあります。
痔がある場合だけでなく、ぬり薬によるかぶれ、お尻の不衛生、更年期の女性ホルモンの分泌低下、アレルギー体質などで原因は様々です。慢性の下痢などと同様に、肛門掻痒症はとてもつらい症状で、睡眠不足や集中力の低下など生活の質を著しく落としてしまう場合が多いです。
長期に塗薬を使用することによって、皮膚感覚が過敏になり痒みを増幅させているような場合もあります。ステロイドが止められず、治療に難渋しているケースもよくみられます。
スキンタグは漢方で治せるか?と相談を受けたことがあります。スキンタグ(肛門皮垂)とは主に上で説明した裂肛(切れ痔)タイプや血栓性外痔核、カントン痔核の人に続発する皮膚のたるみのことです。痔は治ったのにスキンタグは残ってしまう事は良くあるのですが、特別悪さをしなければ、病気ではないので放っておくというのが痔界の常識だそうで、漢方相談をお断りしたことがありました。ところがどうしても気になるし、手術で取ることもできるのだが怖いと言って引き下がりません。参ったな〜と色々考えて漢方薬を使ってもらったのですが、結果はスキンタグは取れないようですね、、、、トホホ。
温水トイレ症候群っていうのをご存じでしょうか?、別名ウォシュレット症候群とも言うそうですが、某社の商標とのことで色々言われても困るので、温水便座症候群だとかそれっぽい名前がついていたりします。おトイレを済ませた後にボタンを押すと、トイレの奥からニョキーっと出てきて温水を吹きかけて去っていくアレのことですよ。排便後のお尻をきれいにするという意味では痔の予防にも効果がありそうですが、水圧を強くして肛門を傷つけてしまうことがあるのです。中には赤くただれて、出血してしまう人もいます。歯状線より下の肛門出口付近には知覚神経が来ていて、裂肛タイプは激しい水圧でドヒャーとなるそうです。よくよく聞いてみると洗浄目的ではなく、便意を促そうと水圧を高めにして肛門を刺激するために温水をかけているとの事。。。刺激にに対しては慣れが生じるのが人の常、だんだん刺激を強くしていかないと便意が来なくなるので、エスカレートしてしまうとか。温水トイレはあくまでも排便後の肛門を清潔にするために使うのが良さそうですね。清潔にするだけでも痔の予防になるのですから。
漢方相談をしていて、痔ほど季節感のある症状も珍しですよ。痔は冬の初めに、北からの寒波が波状攻撃してくるようになると一気に相談が増えます。堰を切ったかのように急増するので、相談が増えた最初の週を痔WEEKと呼んでいます(笑)これは何でかな?と色々考えたり問診したりするのですが、便秘が急増することと、激しい寒暖の差で、自律神経が環境の変化に追い付かないからじゃないかな、、、と思っています。血管を開いたり閉じたりはするのは自律神経やホルモンがやるのですが、これが上手い事いかなくなってしまうんでしょうね。先週まで半袖で、今週はダウンジャケット着るみたいな時ってありますよね。ああいう時は昼夜の気温差も15度だとかとにかく大きいです。そうするとお尻の血流が悪くなって痔エンドとなるんじゃないかな。。そういう時は強制的にお尻の血流を良くしないとダメですね。風呂が一番です。シャワーじゃ温まりません。
お尻にやさしい生活のすすめ
痔のきっかけとして一番多いものは排便異常によるものです。特に便秘、下痢はお尻に対する負担が多く、便通異常を改善することは痔の漢方療法を行う上でも重要な位置づけになります。