この様な方に漢方薬はお勧めできます
- 不妊治療中だが、漢方薬で治療をサポートしていきたい
- 高齢出産でより安全に出産をしたい
- 妊娠、出産に向けて万全の準備をしておきたい
- 妊娠や出産に対して体力、精神面に不安がある
- 原因不明の不妊症である
- かつて何らかの治療のために女性ホルモン剤を服用していたことがある
- 子宮筋腫、子宮内膜症、生理不順、排卵障害などの妊娠の妨げになりうる病気を持っている
- 長引く不妊治療で疲労し、子宮や卵巣をしっかりと回復させたい
- 流産癖がある
- 精子の直進率や運動率などに元気のない方、精力の低下している方
男性不妊については詳しい説明は>>>こちら
不妊症とは?
避妊しないで2年以上性生活を営んでも妊娠しない場合は不妊症と言います。約10%のカップルが不妊症であると考えられています。
女性は30歳を超えると毎年3.5%ずつ妊孕性(にんようせい:妊娠のしやすさ)が低下するとされ、35歳以降でさらに低下がすすみ、40歳を過ぎての妊娠確率は少なくなります。
妊娠年齢が高齢化するに従い流産の割合も増加すると言われています。これは加齢とともに胎児の染色体異常の頻度が増加するためと考えられています。
男性側の妊孕性は加齢に伴う低下は顕著ではないが、精子の質は年齢とともに軽度ながら低下を示し、精子が持つ染色体の異常も同様な傾向を示すと言われています。
妊娠を希望する場合の準備をしよう
@基礎体温を記録する
基礎体温では排卵の有無や毎月の排卵パターンを予測できます。同時に高温相をつくる黄体機能や、不正出血の原因を推測できる場合があり、妊娠準備をする上での有益な情報が得られます。
ただし女性にとって毎日の検温は心理的、肉体的に負担を伴う場合があります。初めは2、3周期を目安に検温し、ある程度の排卵予測が自分で出来るようならばお休みを入れたり、排卵や生理予定日前後などプレッシャーが強い日は休憩を入れるなど無理をしないことが大切です。
基礎体温をつける目的は排卵日の予測をすることです。排卵日検査薬を併用するなど、負担の少ないやり方を見つけてみましょう。
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基礎体温については、必ずしも排卵日に温度が最低になるわけでありません。低温相の最終日に排卵を認めるものは10%程度で、基礎体温上昇期の1〜3日までの間に75%の排卵が起きると言われています。
A妊娠しやすい日を推測し性交を試みる
そもそも妊娠しやすい日とはいつでしょうか?
基礎体温上では最終低温日の2日前から体温上昇日の1日目が妊娠しやすいと考えられています。これは精子の受精能力が24〜48時間に対して、卵は排卵後12〜14時間程度とされているからです。また排卵に先立って頸管粘液(おりもの)が増えてきていることを確認できれば、精子の受け入れ準備が出来ていると考えられます。基礎体温や排卵日検査薬と併せてタイミングを知る手掛かりになります。
*性交とはカップルのコミュニケーションの一つであり、必ずしも妊娠だけを目的にしたものではありません。カップルの心身調和やつながりを確認し合うことも妊娠活動には意味を持ちます。
Bカップルで話し合い互いの意思を確認しておく
妊娠活動において特に女性は色々な情報に触れることと思います。同時に周囲からのプレッシャーや焦りを伴うものです。治療の途中で精神的に不安定になったり、不仲になったりすることがあります。カップルの対話により解決されることや時間が解決する場合もあります。様々な情報、プレッシャーの波にもまれながら治療を継続するには、カップル間でコミュニケーションがとれている方が安定的に歩を進めることが出来ます。道に迷った時に戻れる目印があれば良いのです。カップル間で共通の意志を共有、更新しながら妊娠活動を進められれば理想と言えるでしょう。
ポイントはカップルが主体的な意思決定をしていけることです。
C専門家に相談をする
タイミングを見ても妊娠しない場合は、20代では2年、30代では1年以上妊娠しない場合は不妊治療を考慮してみると良いでしょう。この数字に根拠がある訳ではありませんが、女性の年齢が35歳を過ぎると妊孕性が顕著に低下することを念頭において対応する必要がありそうです。
漢方薬を用いた東洋医学的な介入は不妊治療のどのステージからも応じていますが、早めの対応を図るほうが良好な結果を得られやすいと言えます。
どうして不妊症になるのか?
個々のカップルの不妊原因を適切に判断することは難しく、妊娠成立の過程で医療が実際にかかわれることが出来る部分は限られています。原因と思われる状況を改善してもすぐに妊娠成立とならない理由はここにあります。不妊と呼ばれる状態の背景は多様です。
不妊原因は以下のように分類されています。
- 頸管因子の異常によるもの
- 卵管の異常がかかわるもの
- 排卵異常がかかわるもの
- 卵の捕捉障害がかかわるもの
- 受精障害によるもの
- 着床障害によるもの
- 子宮内膜症に伴うもの
- 免疫がかかわるもの
これら以外にも射精障害、精子産生の異常といった男性因子の不妊症があります。不妊原因の40%程度を占めると言うデータがあります。さらにカップル間で原因の特定ができない原因不明不妊があります。
漢方薬による不妊治療で出来ること
漢方では体全体の環境やホルモンバランスを整えることで、妊娠しやすい体つくりを行っていきます。西洋医学の治療は時に副作用が起こる事があります。漢方薬による治療は体質的なゆがみを整え、結果として
「自然に妊娠するちから」を最大限に引き出していく事が目的です。
同時に西洋医学的な治療と併用する場合には、治療効果の向上や副作用の低減に役立ちます。
- @子宮内膜の状態を整える
子宮内膜は適度の温かさや柔らかさを保つことで、受精卵をやさしく受け止めて成長させていくことが出来ます。漢方処方の多くは婦人薬由来のものが多く、骨盤内の血流をととのえ妊娠や出産に至るまでのケアをバックアップします。
- Aホルモンバランスを整える
漢方薬を使うことで乱れていた月経周期や、高温相や低温相で起こるホルモン分泌が順調になるよう整えていきます。そうすることで自然と妊娠しやすい体に変えていくことが出来ます。
- B卵の質をあげる
女性の卵巣機能は「腎」によりコントロールされています。漢方薬で「腎」の働きをサポートすることでよりコンディションの良い卵子が排卵されるようにしていきます。
- C心身のバランスを整える
心の乱れは体の乱れにつながると考える東洋医学では、妊娠活動に伴う心身の疲れを癒すことが大切と考えます。女性ホルモンという面からだけでなく、自律神経系や精神活動にいたる幅広いケアで、体に無理の負担をかけずになるべく自然な形で妊娠できるようにしていきます。
- D不妊治療で無理した体を休める
ホルモン剤や侵襲性の高い治療は長く治療を継続することはできません。全力以上の力で走り続けることは、短距離走のペースでマラソンを走り続けるようなもので、いつか破たんしてしまいます。漢方は疲労した卵巣だけでなく、心身を休めることに役に立ちます。
東洋医学では受精卵を種、子宮内膜を畑にたとえて妊娠を説明します。
赤ちゃんができるためには、この種が畑に根をおろし、適度な栄養、温度、水分を取り入れすくすく成長していくことが必要です。元気な種とその成長に適した畑、そしてそれを取り巻く環境がバランスよく調和したときに妊娠が成立すると考えています。
生殖を司るものとして「腎」「気」「血」などが重要な働きをしています。
代表的な不妊症の体質タイプは以下になります。
- @適度な温度が足りないタイプ
種である受精卵はこれから成長していくエネルギーに満ちたいわば陽気のかたまりです。
その成長には適度な温度が必要で、冷えはその成長を妨げると考えられています。
基礎体温上は黄体期(高温相)が9日以下と短かったり、低温相と十分な温度差(0.3℃以上)が得られない黄体機能不全の方や、自覚、他覚的に冷えが強い方はこのタイプになります。
骨盤内を温め血流を促進する漢方薬やホルモンバランスを整える補腎薬、卵胞の発育や黄体機能を改善する漢方薬を用います。
- A栄養不足のタイプ
種が着床する畑(子宮内膜)に栄養が足りないタイプです。畑がやせていると種はどうしても根をおろすことができません。畑の栄養状態は緩慢になり、黄体期(高温相)が得られない排卵障害のあるタイプ、生理周期が短く卵が十分に成長できないタイプ、子宮内膜が厚くならなかったり頸管粘液(おりもの)の性状が不十分になるケースがあります。ホルモンバランスを司る腎が弱ってきたり、胃腸の働きが弱く、畑や種に必要な栄養を自ら十分に作り出せていないと考えられます。
補腎薬に加え補気薬がこれに応じます。
- B栄養不良タイプ
畑の土に栄養の過剰や偏在があるため上手くいきません。
漢方でよく言われるお血(おけつ)タイプです。畑に石ころや硬いコブがあったり、栄養が過剰な状態では受精卵に適した畑とは言えません。このタイプの方には、子宮内膜症や子宮筋腫などの骨盤内での炎症がよく見られます。基礎体温上は体温変動が激しかったり、生理の状況が安定しない、生理中に体温が上がるなど気の乱れを伴います。気血の流れを整える漢方薬がこれに応じます。
このタイプの方は一見すると血色のよい顔をしていますが、下半身や末端は冷えており上半身や首から上はのぼせ気味です。頭痛や肩こり、生理中の生理痛(刺すように痛む、固定的)、生理不順などがあり、子宮筋腫、子宮内膜症などを持っているケースもあります。ストレスが多い人、睡眠不足、肥満や甘い食べ物を好む傾向のある方にもよくみられます。
- C水浸しタイプ
種が育っていくためには水分が必要不可欠ですが、水分が過剰にありすぎると種は流されてしまい、根を下ろすことができません。腎はホルモンだけでなく水分代謝を司る事から、補腎薬をベースに体の水分代謝を高める利水薬がこれに応じます。
むくみや水太りしやすいタイプで、汗かき、冷え症、お肌はもちもちとして水分を含んでいる感じがあります。湿気が苦手で、梅雨や雨天は体調がすぐれません。水分の過剰摂取をしたり、運動不足で汗をかかない、おしっこの出が悪かったりと余分な水分を抱え込むタイプです。耳鳴りや関節痛を訴える人にも多いです。
- D種(受精卵)に元気がない
男性不妊と女性不妊のケースがあります。
男性の場合は精子の数や活動に問題が見つかることもあります。ストレスや虚弱体質、疲労困憊などで精力が落ち、元気な受精卵を作れないケースがあります。補腎薬や強壮作用のある動物生薬がこれに応じます。
女性側には低温期が短すぎて卵が十分育たないまま排卵してしまったり、無排卵月経、多嚢胞性卵巣症候群などの要因があります。加齢とともに卵子の質が低下した場合や、早発閉経などの理由があります。ホルモンバランスを整える腎の機能を補い、気血の巡りを充実させる漢方薬を用いることで改善していきます。
上記の分類は相談でよく見られるタイプで、実際は他のタイプもあります。また複数のタイプを併せ持つ方も多いです。
漢方薬は体質タイプ、年齢、治療歴、併用薬などを加味して処方しています。
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