これだけ寒い日が続くと、地球はこれからも年々寒くなっていくに違いなく、おそらくは数年後、氷河期が到来するのではないか?
低い角度で窓から入る午後の光にまどろみながら、意識と無意識の境界付近で、当座はありえないだろう脅威を源泉に「冬の寒さ」について思索していました。
冬が夏に比べて寒いのは、太陽から届く光の角度と関係があります。低い角度で入射した冬の太陽光は、部屋の奥までやさしく温め、窓の外の喧騒から空間を守り、万人を午睡に導くかのような至福の時間を与えてくれます。一方、夏の太陽光は、垂直方向からジリジリと音を立てて降り注ぎ、鉄骨を曲げアスファルトを溶かすかの有り様です。季節によって同じ太陽から受ける温かさがこうも異なるのは、太陽から地表に届く太陽光の角度によってもたらされています。これはストーブの正面が一番温かく、斜めの位置から暖をとろうとしても、なかなか温まらないのと同じです。
この様に、気温は季節を通じて変化しており、暑いと寒いを延々と繰り返していきます。太陽の周りをグルグル回る地球がもたらすこの変化こそが、生命の誕生や進化、文化の創造や多様性、その他あらゆるものごとにアクセントをつけ、在るべきものが存在し、不要なものは淘汰されてきた帰結として、今日の地球がよろしくやっていると言うのは、もはや神秘の所作と言えるかもしれません。しかし、私たちヒトを含めた多くの生物が、気温のめまぐるしい変化をよそに、
かたくなに守り続けているものがあります。
暑かろうが寒かろうが、私たちがかたくなに守り続けているもの、それは
体温です。生命を維持するために許された体温の遊びは、わずか数℃。
そして、その数℃の許容範囲に体温を維持するために、エネルギーの大半をつぎ込んでいます。働いていようが寝ていようがお構いなし、
エネルギーの75%以上は熱に変換され体温の維持に使われています。
日本人の体温は、
平均36.89℃とされており、1日のうちの体温変化は、ほぼ1℃以内におさまるのが普通です。子供の体温を測ってみたら、37℃。「どうしよう、保育園が預かってくれない」「予防接種が受けられない」「プールに入れない…」そう思われるお母さんが、たくさんいらっしゃることでしょう。
これは水銀体温計の37℃を示す数字が赤かったことから生まれた誤った常識で、正しく測れば、子供からお年寄りまで、健康な時の体温の平均値は36.89℃±0.34℃(腋窩:ワキ下検温)になります。
また、この範囲から少しくらいずれていても、おかしくはありません。
医学的に正しい測り方をすれば、37℃は発熱の目安というより、むしろ平均的な平熱の範囲内であることがわかっています。“平熱”にも個人差があって当然なのです。(テルモ体温研究所より引用)
体温が低い人が多い
私は、自分の薬局で多い時に月に100人くらい検温させてもらっています。そこで健康時の日本人の平均とされる平熱、36.89℃を超えるのは3割程度、日内変動における体温のバラツキを多少考慮しても、半分くらいの人は平均を下回り、さらにその半分は、36度以下の低い体温を示す人もいます。
平均的な体温の周辺にある方は、概して健康的で、多少の不調を抱えつつも、細胞の新陳代謝がよく、年齢相応かそれ以上に活動的、なおかつ免疫力が高く、重大な病気へ発展しそうな気配はありません。
一方で、36度未満の低い体温を示す人たちは、新陳代謝が不活発で、免疫力や排泄機能が低下し、生理不順や更年期障害、自律神経失調の傾向があります。
身体の最適温度
世の中の平均が、必ずしも最善とは限りませんが、体にとっての最適温度とは一体どのあたりでしょうか?
体は、様々な物質の集まりでありますが、単なる物質ではありません。生きている体、つまり生体は、物質が秩序をもって、有機的に機能するモノです。秩序は遺伝子によって規定されますが、物質どうしが、有機的に機能するためには、酵素や補酵素が必要となります。
それらは、生体内で起こる化学反応を加速させる微量物質で、特定のタンパク質やアミノ酸、またはビタミンやミネラルです。卵から雛がかえったり、パン酵母が発酵するのに最適な温度があるように、また、ある時期からの最高気温の累積が一定に達したころに、花粉が飛び始めたり桜が開花するように、多くの現象には、その
動的根拠の一つに熱を要します。
物質が機能するための熱、ヒトの場合は、おそらくはこの
平均体温36.89℃付近にありそうです。
ですから、体温を維持したり上げようとする一連の試みは、昔から養生術として言い伝えられてきたのではないでしょうか。
一日一回はぬるま湯にゆっくりつかる、日常生活に運動を取り入れる、温かい飲食物を十分に取り入れる、出先では一枚余分に羽織るなどを複数を組み合わせることで、なるべく身体の最適温度に近づけておくことこそが、太陽の角度が低い今時分には大切だと思います。今年の冬は寒いですから、徹底して体を冷やさない、冷えてしまってもなるべく早く温める、こういう事の積み重ねが大切ですね。