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穴の内と外

ドーナツの穴だけを残してドーナツを食べる方法を考えてみたが、しっくりくる答えが見つからない。ドーナツの穴を穴せしめている本体部分を食べ続けて行けば、穴だけが残る状態へ限りなく近接するが、ある一線を超えると穴は崩れて外側にある空間と融合し、その前提とともに姿を消してしまう。

ドーナツの穴

よくよく考えれば人間も穴だらけであり、口や鼻などの大きなものから、毛穴や分泌腺などの小さなものまで、体の内や外に向かって無数の穴を開口している。これらは細胞一つをとっても、あるいは細胞内の小器官に至るまで、規模や形態は違っても連続的に同様な構造を以て、内外と交通する穴を持っている。そうなってくると、体の中と外を隔てる境界はとても曖昧なもので、いよいよどの辺りが体の内側で、外側かなどと言う事は、私たちの思い込みしだいでどのようにも変わってしまう。

穴、あるいは穴が連続してつながった管は、その形態だけに注目すれば、その内側と外側を明確に示すことが出来るが、細胞内の小器官にある穴から、鼻の穴まで連なる連続的な層構造で内外を考える時、穴の外は穴の内であるというチグハグな事が起きてしまう。例えば、鼻の穴の内側を、体の中に向かっていくと、胃袋という穴(この場合は管)の外側にたどり着くように。
この様な関係性は体のあちらこちらに見出すことができるが、穴とは一体なんなのか、その実相には容易にたどり着けそうにない。
ここで一度、頭を休めてみていただきたい。釈然としないモヤモヤで気分がスッキリしないかもしれないが、心にはポカリと穴が開いてしまった。ドーナツの生地をこねる前にドーナツの穴を作る事は、言葉の上では出来るのかもしれない。

東洋医学で言う穴の内と外

ドーナツの穴と体に空いた穴の決定的な違いは何でしょうか?ドーナツの穴は、ドーナツ生地が作る円環そのものですが、鼻の穴は、多くの機能を伴って存在するより有機的な穴と言えます。つまりは、細く伸ばしたドーナツ生地の両端をつなぎ合わせてできた空間をドーナツの穴と呼んでいるのに対して、鼻の穴は、効率的に呼吸したり脳の温度を下げたりするなど、生存に適したように、様々な機能をより洗練させていく過程で形作られた形態の帰結としての穴であるという違いが、そこにあるように思います。
東洋医学においても、人の体は穴だらけという考えは、現代の私たちが考えている常識的な範囲とそれほど変わりはありません。鼻や耳、肛門などは、体に開いた穴と考えますし、毛穴や分泌腺の様な目には見えないような細やかな穴も、体の内外を交通する穴と捉えています。


穴の向き

穴には正しい向きがあるのが一般的です。車の給油口や鍵穴など一方向のものもあれば、玄関扉やトンネルなどの両方向に向きを持つものもあります。これらは機能や用途によって決定される向きであり、逆向したり、向きの流れが滞ったり、場合によっては促進され過ぎたりすると都合がよくないわけです。

人の体に空いた穴の場合はどうでしょうか?体に開いた一本の大きな穴(管)ともいえる消化器は、上から下向きの流れを順とする穴です。鼻や口、気管や肺など、呼吸に関する穴は両方向に、発声という点に注目すれば外向きの流れを持つとも言えます。注目する機能によって穴の向きが変わる一例です。
血管は全身に張り巡らされた穴(管)ですが、動脈や静脈はいずれも血液の流れる向きが決まっています。下半身の静脈は、重力と反対方向の流れを順とする上向きの穴ですから、冷えやむくみなどの滞りが起きやすい弱点を抱えています。
大小便や汗などに関する穴は全て下向き、あるいは外向きの穴です。目はどうでしょう。視機能という点から見れば、カメラのレンズに相当する目は、外の光を内に引き入れる事から内向きの穴ですが、涙を分泌して目を潤す涙腺は外向きの穴と言えます。目は英気が宿ると言われるように、気力の充実したときには外向きに強い目力(めぢから)を発表するという考えも出来ます。目は心身の状態が現れやすい特殊な穴と言えます。

ドーナツには穴が開いていますが、ドーナツ本体に穴が開いてしまう場合もあります。床ずれや痔ろう(肛門周囲に出来る穴:ろう孔と言う)、すり傷や、慢性に再生しない湿疹などは、本来穴ではないところに意図せず開いてしまった穴であり、ドーナツ本体をかじられたような状態です。なかなか厄介な穴です。

穴わずらい

昔の人は穴患い(あなわずらい)という言葉を使います。物もらいや蓄膿、中耳炎の様な顔面部に開いた穴に出来た化膿を伴う病気の事を指すそうです。私たちの病気やちょっとした不調と言うのは、広い意味で穴患いと言えるものが多く、実際、東洋医学では、そこを通過する気体や液体、固体の巡りや向きの加減を、理論的に弁別している側面があります。

ちょっと胃がムカムカして吐き気がするようなことは、誰でも経験するようなことです。消化器は下向きを順とするので、吐き気があるような場合は、穴の向きに逆らっているような状態ですから、不快以外の何物でもありません。それを下向きに治す薬を使う事もありますが、食事を改善したり、穴の流れが上向きにならないような養生の方が、日常的に大切だと言えます。

穴わずらいを、穴の向きの失調や異常と捉える以上は、例えばそれを治そうと薬を用いる時には、その薬そのものにも「向き」が無くてはなりません。下向きの穴である大腸でお通じが滞れば便秘となりますが、それを下向きに促進させる薬の事を、東洋医学では下剤と呼んでいます。日常的に下剤にお世話になる人は少なからずいるのですが、便秘が続くと食欲が無くなり、下剤を使ってスッキリすると、再び食欲が改善すると言う事は良くあることです。口からお尻を一本の穴と考えれば、それも納得のいく話です。

便秘や下痢、痔、鼻炎、喘息、皮膚病、逆流性食道炎、ものもらい、、、、内外に開口した穴の向きに注目していくと、そこには病気や不調を別の視点で捉える新たな眼が備わります。
穴の入り口や出口に何が入って、どのように出て行ったかを観察していくと、色々な気付きも出てくるものです。

今、穴の前にいます。それは入り口でしょうか?あるいは出口でしょうか?

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