副鼻腔炎とは、鼻の内部の空気の通り道である鼻腔の周囲にある副鼻腔において、炎症がおこる病気で、鼻づまりや鼻汁、頭痛や頭重感、嗅覚障害などの症状が現れます。
一般に命にかかわることの無い病気ではありますが、不快な症状から集中力や睡眠の質が低下するなど、日常生活に支障をきたします。
副鼻腔は、それぞれ直径2〜3mm程度の「自然口」とよばれる小さな穴で鼻腔とつながっており、その粘膜面は線毛という細かい毛でおおわれています。副鼻腔の中にほこりやウイルスなどの異物が入ると、
線毛の働きによって異物は自然口から排出される仕組みがあります。
副鼻腔炎の原因は、風邪による急性上気道炎に続いて発症しやすい事から、主にウイルスや細菌感染があげられます。ウイルス感染などにより、
粘膜面が障害されると細菌が付着しやすくなるため、風邪が長引いた入りすると二次的に細菌感染が起こります。それ以外にも、上奥歯の歯根治療から副鼻腔(上顎洞)に細菌感染が起こる事によって発症するケースもあります。また、アレルギー性鼻炎などに合併して発症することもあります。
ウイルスや細菌感染、アレルギーなどにより、鼻粘膜に炎症が起き、粘液の分泌が亢進したり線毛機能の低下が現れます。また、粘膜の浮腫(むくみ)に続いて自然口が狭まり、副鼻腔にたまった粘液が排泄されにくくなると、細菌を含む膿がたまり、副鼻腔の炎症が反復した入り持続したりします。
1カ月程度で収まるケースを急性副鼻腔炎、3か月以上症状が持続するものを慢性副鼻腔炎といいます。
大気汚染や栄養のアンバランス、アレルギー体質などの原因以外にも、
鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)と呼ばれる鼻の構造的彎曲が、自然口をふさいでしまう事で、副鼻腔炎を悪化させてしまう要因もあります。
また、副鼻腔の粘膜に好酸球が多数集まる「
好酸球性副鼻腔炎」は、特殊なアレルギーの関与が疑われる副鼻腔炎です。風邪などに続発する感染性副鼻腔炎は小児に多いのに対して、好酸球性副鼻腔炎は治りにくく、成人に多いのが特徴です。
副鼻腔炎の疫学
急性、慢性副鼻腔炎ともに9歳未満の小児において最も患者数は多くなるが、慢性副鼻腔炎においては60歳以降の高齢にも多くみられます。
鼻も口も空気の通り道であり、どちらかの経路が確保されていれば窒息する事はありません。呼吸の経路として二つの道をを備えている事は、何かの緊急時には命拾いする事もあるかもしれませんが、それ以上の意味があって呼吸器としての鼻、口が共存しているはずです。従って、平時に鼻づまりなどにより口呼吸だけになったら、色々と不都合をこうむるものです。
東洋医学は呼吸と言う点に重きを置いていますから、肺炎だとか、喘息だとかそういった肺病は重大ですが、
鼻炎、副鼻腔炎というのも、肺をおびやかすと考えて対処していきます。と言うのも、肺は気の流入経路であり、飲食物をエネルギーに変える消化管の機能と同様に、全身の活力を司る両輪の一端をなすと考えられているからです。特に慢性の蓄膿症で虚弱、高齢とあれば、全身の不調まで視野を広げた養生が必要になります。
東洋医学においては、急性または慢性副鼻腔炎で治療法が大きく変わる事はありません。風邪の後に続発したものであれ、何年も続く慢性の副鼻腔炎であっても、その時の症状から類推される体質に対して処方が決まります。
始めのうちは排膿薬を中心に、膿や鼻汁を排泄して鼻道をきれいにします。その後、化膿した鼻漏を伴うのであれば熱ありとみて清熱薬を、鼻閉や嗅覚異常などが中心なら、患部のむくみをとる処方が中心となって応じます。
症状に対しては、この様な薬による対症療法で治りますが、毎年のように繰り返したり、慢性的に続く副鼻腔炎、手術で治しても再発してしまうケースなどでは、目下の症状だけでなく体質改善を試みる場合もあります。
東洋医学では、病気と言うものは色々な毒なるものを体内に蓄積する事によって、それが内因となり、そこへ外因が乗じて引き起こされるという考え方があります。
例えば、飲食不摂生で新陳代謝に悪影響を与え、副鼻腔炎の内的要因となり、そこに風邪や細菌などの外因が加わることで治りきらないと考えます。
他にも体の排水機能の低下から、体液の過剰滞留が起きてしまうなどという考え方もあります。現代の言葉や科学の理屈にたよっては、説明に窮してしまうのですが、漢方の経験則から便宜的に体質分類をすることで、選薬の基準としています。
【主な体質分類】
- @お血証体質(汚れた血液、血行不良や偏在などが顕著なタイプ)
- A臓毒証体質(体の中に毒素を溜め込んでしまう傾向が強いタイプ)
- B解毒証体質(肝の解毒能が弱く、体表の開口部を患いやすいタイプ)
実際、体質鑑別のポイントは細かいのですが、おおむねどのような傾向が強いのかによって、処方が変わってきます。詳しくはお気軽にご相談ください。