インスリンなどの血糖値を調節するホルモンや、膵液とよばれる強力な消化液を分泌する膵臓の炎症は、食生活の欧米化やアルコ ール摂取の増加などにつれて右肩上がりの疾患です。
血糖値や消化にかかわる重要な臓器のため、炎症を受けるとその影響は広汎に広がるため、治療だけでなく再発の予防に努める必要があります。急性膵炎と慢性膵炎があります。
- @急性膵炎
本来なら消化されてはいけない膵臓が、膵液中の消化酵素によって自己消化されてしまう病気です。飲食の数時間後に突然起こる左上腹部からみぞおちにかけての激しい痛みが特徴で、背中や左肩にまで放散痛が広がり、吐き気や発熱を伴うこともあります。
重症化すると意識を失ったり、昏睡や呼吸困難など命にかかわる症状が出現することもあります。習慣的なアルコール摂取、胆石が主な原因ですが、原因不明のケースも多いと言われています。重症急性膵炎は国の指定難病です。
- A慢性膵炎
膵臓に慢性の炎症が生じて細胞が繊維化し、膵臓としての機能が低下する病気です。繊維化し機能を失ってしまった細胞は元には戻りません。
小さな炎症が膵臓内であちこちに発生し、炎症、治癒、繊維化を繰り返しながら膵臓機能を低下させていきます。原因は長年にわたる飲酒習慣や脂っこいものやタンパク質の多い食べ物の偏食、胆石、ストレスなどが考えられています。
激烈な炎症を伴う事が多い急性膵炎に対し、慢性膵炎では激しい痛みや鈍い痛みが緩慢と続いた入り、腹部膨満感や下痢、吐き気、その他不定愁訴が続くことが特徴です。病気が進行していくほどに腹痛は低減していきますが、進行して膵臓機能の低下が進むほどに消化吸収障害、場合によっては糖尿病を合併するケースもあり予後にも注意が必要です。
漢方薬で膵炎を治す
急性膵炎の重症例は漢方薬の適応ではありません。
急性膵炎の寛解期や慢性膵炎においては、四逆散という処方をベースに合併症の有無や症状、体質に応じた薬を用います。
東洋医学には不通則痛と言うように、気や血の滞りは痛みに変わると言う考えがあり、理気、駆お血薬が膵炎の場合にもよく応じます。薬で症状が改善したとしても、膵炎の予後は断酒と食生活の改善、ストレス環境の改善が何よりも大切になります。
慢性膵炎の場合は、一度失われた膵臓の機能は元には戻らないため、病気と上手く付き合って膵臓機能を守っていく生活が大切です。
詳しくはお気軽にご相談ください。
膵炎の再発予防のために
- @禁酒する。
- A禁煙する。
- Bカフェインや香辛料は膵液分泌を高めてしまう場合があるのでなるべく控えめに。
- C暴飲暴食を避け、規則正しいバランスのとれた食事を心がける。(低脂質、低たんぱく食)
- D膵炎と言う病気や合併症の怖さを知る。
コラム
急性膵炎は劇症例もあるため、専門医による治療を優先すべきです。漢方療法は予後の補助療法と考えるといいでしょう。
膵炎は働き盛りの男性に多いのですが、背景としてはストレスや生活習慣の乱れやと言った環境因子も多いと感じています。酒もタバコもしないのに膵炎になる原因不明のタイプが増えているように思います。
薬で症状が良くなったと思ったらまた再発してしまう、、、年末や決算前になると仕事が多忙でまたみぞおちの辺りが変に重苦しくなると言って繰り返してしまうのです。
お酒や美食が原因と考えられる人も繰り返してしまう方が多いです。自覚症状が有る時は酒を控えて薬を飲めば症状が落ち着く、しばらくするとまた飲みたくなるといった感じです。お酒や美食にはきっと魔力の様な快楽を脳に刻むのでしょうね。
日本人の食事はどんどん欧米化していきますね。胃酸も胆汁も膵液も欧米食ばかり食べていると大量に分泌されて、それが逆流したり停滞すると炎症します。巡るべきものは巡り続けなければならないと言うことですね。