足の裏側やすねの部位にボコボコとしたコブや蛇がはいずったように血管が浮き出る病気が
下肢静脈瘤です。女性に多く妊娠を契機に発症することがあります。
足の静脈には心臓へ戻ろうとする血液の逆流を防ぐ弁が付いていますが、この
静脈弁が壊れたり、働きが悪くなると血液が逆流し、静脈血は心臓へ戻らなくなってしまいます。
特に脚の表面付近を流れる
表在静脈で異常が起きたものを下肢静脈瘤と言います。
足が重だるい・ムクミ、ムズムズと痒かったりこむら返りなどの症状が現れます。自覚症状のほとんどない軽症例であっても、美容的観点で悩まれている人も多く、潜在患者は1000万人程度と言われています。
- ①伏在静脈瘤
下肢の比較的太い血管での血液の逆流が起きている状態で、ひざ下の内側などに目立った拡張や蛇行がみられます。血栓症に発展する場合もあるので注意が必要です。
- ②網目状静脈瘤
ひざ裏に出来やすい網目状の細い血管の隆起がみられますが、症状はほとんどありません。若い方でも見かけることがあり、美容面で心配される人がいます。
- ③クモの巣状静脈瘤
皮膚の中の細い静脈に出来る静脈瘤で症状はありません。クモの巣のような細かい静脈が模様のように皮膚に透けて見える状態です。
下肢の静脈血が停滞した状態は、東洋医学の言うお血の症候の一つといえるため、漢方薬では体質に応じたお血を取り去る処方で対応します。上記の網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤は東洋医学では細絡(さいらく)と呼び、細絡を治すと言うよりかはお血の程度を判断する指標として重要視されています。冷えを伴う下肢のお血は苓姜朮甘湯をベースにした処方や、地竜などが奏功します。
静脈弁の破壊が高度に進んだ静脈瘤では、漢方薬では対応せず外科的な処置が必要になります。術後のケアや症状の進展予防には漢方薬が奏功します。
お気軽にご相談ください。
こんな人は要注意
下肢の血液は、足の筋肉の屈伸と逆流防止弁が協働して血液を心臓に送り返しています。ですから一日中立ち続けて仕事をしている方や運動不足は下半身の静脈血の停滞を招きやすいです。肥満傾向の方も下半身の静脈にかかる圧が高くなるため注意が必要です。
血液の粘度を上げるような偏食(甘いもの、油っこいもの、過度の飲酒、タバコ、脱水など)や冷えはお血を生じさせるため、生活習慣を立て直してみるとよいでしょう。
ひざサポーターなどできつくひざを締め付けている人も、静脈血の停滞を招きやすくなるので加減が必要な場合があります。
- ①長時間立ち続けるようなことはせず、座ったり少し歩く、足の筋肉をもぞもぞと動かすなどして血液循環を意識しましょう。
- ②寝る時は足を20㎝ていど高くしてあげると、血液が心臓に戻りやすくなり、疲れやムクミととみに症状が楽になることがあります。
- ③足の冷える格好はなるべく避け、一日の終わりには入浴等で血行促進を心がける。
- ④お血をつくる偏食は避ける(冷飲冷食、甘い物や油っこい物の過食は避け、粗食が良い)
- ⑤弾性ストッキングを使用することで下肢静脈瘤の予防になることがあります。
日々の相談の中では下肢静脈瘤はとても多く見かけます。多くは女性で中高年以上の方に多いよいうに思います。症状が無い事が多く、当人も全く気にしていないケースが多いのですが、漢方ではお血の所見として見逃しません。程度の差こそあれ下肢静脈瘤をもっている人と話をしていると、お尻の静脈瘤である痔の有病率も高いように感じます。
エコノミークラス症候群という病名があります。狭い座席等で長時間いると起こりやすい病気ですが、これは上肢や下肢の深部静脈に血栓が生じ、その血栓が肺に運ばれ呼吸困難を引き起こす病気で、最悪の場合は死に至ることもあります。下肢静脈瘤とは違いますが、東洋医学の言うお血がベースにある事は同じです。長距離バスや飛行機などの長時間の移動で、疲れとともに顔色がくすんできてしまう方は、お血を流す漢方薬は予防になるでしょう。しっかりとした水分摂取と併せて行いたいところです。
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